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IOTと無線通信手段(BLE,Wifi,その他) 3つの選択肢

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営業さんがお客さんとの商談において、IOTを売りにしたいんだが、無線通信手段の判断基準が分からないから教えて欲しい。との事で大雑把ですが以下の様な大別をしました。

無線通信手段は3つ

無線通信の種類は細かく分ければたくさんあります。なので、以下の様に大別して3つに分けてみます。

  • Bluetooth
  • WiFi
  • その他

Bluetooth

皆さんがお持ちのスマホには必ず搭載されている通信手段です。
また、ご自宅やオフィスにもBluetooth製品が一つはあるでしょう。

Bluetoothという通信規格に基づいた無線通信手段になり、この規格を満足している製品同士は無線通信が可能というわけです。

細かい事に言及すれば、BluetoothマウスとBluetoothスピーカーは、
同じBluetooth通信でも通信はしません。

Bluetooth通信は用途に応じた通信フォーマットを持っているので、同じ規格でも用途違いであれば通信できない製品が出てきます。

Bluetooth Low Energy(BLE)の場合、1度の通信で送受信できるデータサイズが23byte(MTUの変更すればもう少し大きくできる)なので、大容量のデータを通信する用途には向かないわけです。

例えば、動画データをBluetoothで送るというのは不向きだと言えます。
また、端末間で直接通信をしますので、中央管理を担う機器は不要です。

Bluetooth製品を生産する場合、Bluetooth SIG(米国)といわれる規格管理団体に加盟する必要があり、生産製品の登録が義務付けられています。

製品の登録料は約$8000(80~100万)となりますので、開発・生産予算を計上する際、必ず予算に含んでおく必要があります。

尚、Bluetooth SIGへの登録を行わない場合、製品の取り扱い説明書や梱包箱など、製品説明において、「Bluetooth」という文言やロゴの掲載ができません。
つまり、著作権違反という扱いになってしまいますので注意が必要です。

日本国内では、電波法に準拠する必要がありますので、第三者試験を行い技術適合をしていなければ、国内使用の許可が得られていない為、違法製品になってしまいます。
諸外国においても、仕向け地の法律を確認する必要がありますので、こちらも注意が必要です。

本ブログ内でもBLEモジュールの開発途上を綴っていますのでご参考ください
  --> BGM220S BLEモジュール bootloaderとプロジェクトの関係

WiFi

こちらも皆さんがお持ちのスマホに標準搭載の通信機能です。
Bluetoothと同様に、通信規格に基づいた無線通信手段になりますので、無線LAN規格を満足している製品同士は無線通信が可能になります。

Bluetoothの様に機器同士が直接通信を行うというよりは、ルーターと呼ばれる中央管理装置を介して複数接続するのが標準的な接続になります。

WiFi対応の機器は、このルーターへ追加登録設定するイメージになり、ルーターは複数端末のインターネット接続状態を管理します。

WiFi通信は、大容量のデータをそこそこ高速に通信してくれるので、動画や音声などの大容量データを扱う製品に向いています。

とは言え、小容量データでの通信をすることがダメなわけではありません。
敢えてWiFiを選択しても、通信性能上の問題はありません。

WiFiにも 「WiFi Alliance 」という規格管理団体があります。
こちらの団体へ費用を支払って 「WiFi CERTIFIED 」のロゴを得ることも可能です。

ここで「可能」という表現をしているのは、Bluetoothほど強制力がありません。
もう少し言及しますと「WiFi CERTIFIED 」のロゴは、費用を支払えば取得できるというイメージではなく、きちんとWiFi規格を満足しているのか互換性テストをした結果で付与されます。

つまり、 「WiFi CERTIFIED 」 ロゴの無い製品は、開発メーカーが自社内でWiFi製品の互換性確認をしたかもしれないし、していないかもしれないというものです。

実動作としてWiFi接続できなかったり、非常に遅かったりなど、実機能として課題が孕んでいる可能性があり得ます。

その点で、「WiFi CERTIFIED 」 ロゴのある製品は、 「WiFi Alliance 」 で互換性テストを行い、パスした証として付与されているもので、予算の実用性に伴う印象を受けます。

WiFiについても、日本国内の電波法に準拠する必要がありますので、第三者試験を行い技術適合をしていなければ、国内使用許可を得ていない製品は違法になってしまいます。

諸外国においても、仕向け地の法律を確認する必要がありますので、こちらも注意が必要になります。

その他

ざっくりしていますが、「920MHz帯 (サブギガ帯) の無線通信」、「LoRa規格の無線通信」、「赤外線通信」 ...etcという感じです。

上述の2媒体と大きく異なるのは、表立った統一規格として、民生品への標準機能搭載がされていません。

赤外線通信は、リモコンなどで使われており、一般的な民生品へ比較的搭載されていると言えそうですが、何れの媒体も、通信手順が画一的ではありません。

Bluetooth、WiFiは、製造メーカーや製品種が異なれど、双方向通信が可能です。
しかし、ここで挙げた媒体は、メーカーや製品が異なると、同じ無線帯域であっても、通信の約束事が異なる為、相互通信ができないことが専らです。

これが普及度合いの差になっている理由の一つと言えます。

物は考えようで、一見デメリットに見える部分がメリットになることもあります。
例えば、ローカルの閉じられた環境構築をしたい用途では、BluetoothやWiFiの様に、手順を踏むことで誰でも接続できてしまうのは都合が悪いです。

「920MHz帯 (サブギガ帯) の無線通信」、「LoRa規格の無線通信」は、日本国内の電波法に準拠する必要がありますので、第三者試験を行い技術適合をしていなければ、国内使用許可を得ていない為、違法になってしまいます。

但し、「920MHz帯 (サブギガ帯) の無線通信」、「LoRa規格の無線通信」については、無線モジュールとして電波法に準拠しておれば、無線モジュール搭載の製品としての電波法準拠対応は不要です。

そして、日本国内向けの無線モジュールは、大抵メーカーが技術適合試験を実施し、電波法をクリアしている状況にあります。

「920MHz帯 (サブギガ帯) の無線通信」、「LoRa規格の無線通信」は、諸外国においても、仕向け地の法律を準拠する必要が有る為、くれぐれも注意が必要となります。

どれが最適か? それは製品による・・・

無線通信手段の選択肢の決め手は、製品によります。
そして、与えられた開発予算にも影響を受けると思います。
また、開発仕様にも影響を受けるとも言えます。

例えば、1台しか製作しないのに、Bluetoothを選択して、開発費に加えて規格団体に80万を支払って・・・というのは、賢明な選択とは言えません。
当然、潤沢な予算があり、開発(研究)テーマーに沿うものであれば、この限りではありません。

数台しか製作しないのであれば、その他の通信手段を選択して、開発費と製造費用を落としつつ、ローカルな通信環境を構築する方が全体的には良さそうに思います。

一概に語れないのは、開発案件の仕様、製造台数の条件を含めて議論されるべきだと思われ、通信手段の差異だけで決定することができるとは断言できません。
つまり、製品の企画や方針に左右される部分があるということです。

まとめ

3つの無線通信手段をまとめると以下の感じでしょうか。

  通信手段データ容量  コスト   通信距離
Bluetooth小さい開発費 + 規格費 100m以下
WiFi大きい開発費 + 規格費屋内100m
屋外500m
その他
(920MHz通信
赤外線通信など)
小さい開発費見通しが良い環境で数km

開発の難易度は要求仕様にも依存するので、一概に開発費の高い(安い)を決める事はできません。
規格費、電波法( 国内であれば )の適合試験費は、開発する(しない)に関わらず、その無線通信手段を選択した時点で付いて回ります。

試作フェーズで良く扱われるラズパイにも、WifiとBLEが搭載されています。
原理試作として、システム検討や動作イメージを俯瞰するのには、手軽で大変便利です。
とは言え、同一帯域を扱うので電波干渉含め、扱いには注意が必要です。

--> ラズパイ3 WifiとBluetoothの併用について

~後記コラム~

無線通信で用いられるモジュールは、国内メーカーはもちろんだが、電波法準拠・対応済みのものが大半である。その為、電波法対応済みのモジュールを採用すれば、再度、電波法準拠の対策は不要だ。

Bluetoothについて、Bluetooth SIGへの製品登録をBluetoothモジュールで済ませていても、最終出荷製品として登録しなければならず、電波法準拠の対応と混同している方が非常に多い。2014年以前は、モジュール単体で登録がされておれば良かったのだが、現在はモジュール単体でBluetooth SIGに登録があっても、最終完成品の製品として申請・登録が必要である。

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