リチウムイオン電池は、世の中の製品を小型化へと導いた大きな役目を担ったと言っても過言ではない。それだけに、 旭化成名誉フェローで名城大学教授の吉野彰先生が 、2019年ノーベル化学賞を授与されたのは妥当であり、当然の功績と考えられる。
さて、本題はLipo電池の一般的な性能について語りたい。
以下は3.7V/600mAhのLipo電池の性能表を一部抜粋したものである。
- 「2.2 容量」は電池容量
- 「2.3 公称電圧」は電池の公称電圧値
- 「2.7 充電」は上から最大充電電流、充電時の最大電圧、充電終始電流
- 「2.8 放電」は最大放電電流、放電時の終始電圧
何れの項目も、設計時には気を付けるべき大切な項目になります。
また、一般的なリチウムポリマー電池の性能値であると言えます。
しかし、中には突出した性能を有したリチウムポリマー電池があることをご存知でしょうか?
それが以下の様な電池です。
これは、最初にご紹介したものと同じ3.7V/600mAhの電池の性能表を抜粋したものです。
同じ様な項目が羅列されているのですが、最も数値が異なる部分は以下です。
1つ目の電池: 「2.8 放電 最大放電電流 1200mA 2C」
2つ目の電池: 「2.8 放電 最大放電電流 6000mA 10C」
最大放電電流とは、負荷接続時に電池からの最大供給可能電流です。
同じ3.7V/600mAhの電池でも、電池自身の最大放電電流が異なるのは、接続負荷の必要とする容量に合わせて電池選定を想定しているからです。
つまり、電池としての材質を厳選したハイレートタイプのLipo電池があり、それが正にこの電池になります。
そして、「Lipo電池ならどれも同じ」なんて捉えていると、とんでもない事故に至りますので、電池の選定や設計に関わる相談は、必ず有識者に御依頼されることをお勧め致します。
選定を誤ると爆発の恐れがある
リチウムポリマー電池は電圧が3.7V共通であり、「容量の差異 = 使用時間の差異」と捉えている人が少なくありません。
例えば、上記の如く電池駆動の回路の要求スペック(=負荷電力値)を知らずに選定したことで、どの様になるでしょうか?
電池の最大放電電流値よりも、接続機器側の要求電力が大きい場合、常に電池の最大定格を超えた使い方になり、極論、リチウムポリマー電池は、いつ不具合を来してもおかしくありません。
電池側に保護回路が搭載されている場合、過放電保護回路が作動することで、供給を止めてしまうことも考えられ、機器としては正常動作しない状態が常になることも十分に有り得ます。
電池自体の品質だけの問題ともいえない
昨今、Lipo電池の事故が多いことを受け、日本国内ではモバイルバッテリーがPSE対象機器となっています。
それだけに、設計はもちろんですが、電池セル自体の品質も非常に重要な要素ですが、冒頭から続く例の如く、電池の差異をきちんと把握した上で、最適な選定を行えず、事故に至っているケースもあり得るのではないでしょうか。
開発メーカーは、慎重に電池メーカー選定すべきです。
そして、一般ユーザーの方々は、乾電池と同じ様な感覚で、その辺りに転がっているLipo電池の付け替えは、決してやってはいけないと認識頂いた方が良いと思われます。
機器の小型化が実現できたのは、エネルギー容量を大きくしつつも、内包するケースが小さくできたことから実現できている技術であり、小さい見た目には比例しない爆発エネルギーを秘めています。
電池自体のセルのみならず、設計での安全対策、使用されるユーザーの正しい使い方。三方良しとなって初めて、安全に使える媒体がLipo電池です。