「ESP32-C3とESP32-C5は何が違うの?」
「ESP32-S3ってAI向けって聞くけど、本当に必要?」
「新しく開発するならESP32-C6を選ぶべき?」
ESP32シリーズを調べ始めると、このような疑問を持つ方は多いと思います。
現在、Espressifからは用途に応じて複数のESP32シリーズが販売されています。
それぞれ特徴がありますが、スペック表だけを見ても違いが分かりにくく、「結局どれを選べばいいの?」という状態になりがちです。
私自身もESP32-C5を採用したCPUボードを設計していますが、それは「最新だから」ではありません。
必要な通信機能や将来性を考慮した結果、ESP32-C5が最適だったという判断です。
一方で、IoT機器やセンサー用途ではESP32-C3を選ぶこともありますし、画像処理を行う場合にはESP32-S3を選択することもあります。
つまり、
CPUは性能ではなく、用途で選ぶものです。
まず「どのESP32シリーズを選べば良いのか」を知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
この記事では、現在よく使用される
- ESP32-C3
- ESP32-C5
- ESP32-S3
- ESP32-C6
の4シリーズについて、それぞれの特徴や違い、どのような用途に向いているのかを、実際の開発経験を交えながら解説します。
ESP32シリーズ比較早見表
まずは各シリーズの特徴を一覧で比較してみましょう。
| 項目 | ESP32-C3 | ESP32-C5 | ESP32-S3 | ESP32-C6 |
|---|---|---|---|---|
| CPU | RISC-V シングルコア | RISC-V シングルコア | Xtensa デュアルコア | RISC-V シングルコア |
| Wi-Fi | Wi-Fi 4 | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 4 | Wi-Fi 6 |
| Bluetooth | BLE 5 | BLE 5 | BLE 5 + Classic | BLE 5 |
| Thread / Zigbee | × | × | × | ○ |
| AI処理 | △ | △ | ◎ | △ |
| USB | × | × | ○ | × |
| 消費電力 | ◎ | ○ | △ | ○ |
| おすすめ用途 | IoT | 高速通信 | AI・画像処理 | Matter |
この表だけを見ると、
「ESP32-C6が一番高性能では?」
と思われるかもしれません。
しかし、実際の開発ではそう単純ではありません。
例えば、ThreadやMatterを使用しない製品であれば、ESP32-C6を採用するメリットはあまりありません。
必要のない機能を持ったCPUを選ぶことは、コストや開発期間の増加につながることもあります。
そのため、まずは各シリーズの特徴を理解することが重要です。
ESP32-C3の特徴
ESP32-C3は、現在もっともバランスの良いESP32シリーズの一つだと考えています。
RISC-Vコアを採用し、BLE 5にも対応しているため、IoT機器やセンサー機器など、多くの用途で十分な性能を発揮します。
また、価格も比較的安価であり、情報量も豊富です。
私が初めてESP32を使う方へおすすめするとしたら、現時点ではESP32-C3を選びます。
ESP32-C3がおすすめな用途
- センサーノード
- 小型IoT機器
- BLE通信
- バッテリー駆動機器
- 学習用途
向いていない用途
画像認識や音声認識など、演算性能が必要な用途には向いていません。
また、Wi-Fi 6を使用したい場合もESP32-C5の方が適しています。
ESP32-C5の特徴
ESP32-C5は、Wi-Fi 6に対応した比較的新しいシリーズです。
私自身も現在設計しているCPUボードではESP32-C5を採用しています。
採用理由は、
Wi-Fi 6への対応だけではありません。
BLE 5への対応や、今後数年間を見据えた将来性も考慮しています。
特に新規開発では、一度量産するとCPUを簡単に変更できません。
そのため、「今後も長く使えるか」という視点も重要になります。
ESP32-C5がおすすめな用途
- Wi-Fi 6を活用する製品
- 新規開発案件
- 無線通信性能を重視する装置
- 将来性を重視した設計
向いていない用途
Wi-Fi 4で十分なIoT機器であれば、ESP32-C3でも問題ありません。
そのため、
「最新だからESP32-C5」
という理由だけで採用することはおすすめしません。
用途に応じて選択することが重要です。
ESP32-S3の特徴
ESP32-S3は、ESP32シリーズの中でもAI処理やUSB機能を重視したモデルです。
XtensaデュアルコアCPUを搭載しており、ベクトル演算命令を備えているため、画像認識や音声認識などの機械学習アプリケーションにも適しています。
また、USB OTGに対応していることも大きな特徴です。
USB機器としてPCへ直接接続したい場合や、USBキーボード・マウスなどのUSBデバイスを扱う場合にもESP32-S3は有力な選択肢になります。
ESP32-S3がおすすめな用途
- AI・画像認識
- 音声認識
- USB機器
- カメラを使用するシステム
- ディスプレイを接続する装置
向いていない用途
IoTセンサーや単純な制御装置などでは、ESP32-S3ほどの処理性能は必要ない場合があります。
処理能力が不要であれば、ESP32-C3やESP32-C5の方がコストを抑えられるケースもあります。
ESP32-C6の特徴
ESP32-C6は、Wi-Fi 6に加え、ThreadやZigbeeなどのIEEE 802.15.4通信にも対応したシリーズです。
近年、スマートホーム市場ではMatter規格への対応が進んでいます。
そのため、Matter対応製品を開発する場合には、ESP32-C6が有力な選択肢になります。
一方で、一般的なIoT機器ではThreadやZigbeeを使用しないことも多く、その場合はESP32-C3やESP32-C5で十分なケースもあります。
ESP32-C6がおすすめな用途
- Matter対応製品
- スマートホーム機器
- Thread通信
- Zigbee通信
- 将来的にMatterへ対応したい製品
向いていない用途
ThreadやZigbeeを利用しないのであれば、ESP32-C6の特徴を十分に活かせません。
Wi-Fi通信だけであれば、ESP32-C5やESP32-C3を選択した方がシンプルな設計になる場合もあります。
用途別おすすめESP32
ここまで紹介した内容を踏まえ、次のように選びます。
| 用途 | おすすめシリーズ | 理由 |
|---|---|---|
| ESP32を初めて使う | ESP32-C3 | 情報が多く、価格も手頃 |
| IoT・センサー機器 | ESP32-C3 | 必要十分な性能と低消費電力 |
| Wi-Fi 6を活用する装置 | ESP32-C5 | 最新の無線規格に対応 |
| AI・画像認識 | ESP32-S3 | 高い演算性能とUSB対応 |
| Matter・スマートホーム | ESP32-C6 | Thread・Zigbee対応 |
このように、「何を作るか」が決まれば、おすすめのシリーズも自然と決まります。
私ならどう選ぶか
開発現場では、「一番性能が高いCPU」を選ぶことはほとんどありません。
私がCPUを選定するときに重視するのは、次の順番です。
- 必要な通信方式(Wi-Fi・Bluetooth・Threadなど)
- 必要な処理性能
- GPIO数や周辺機能
- 消費電力
- 将来性
この順番で検討すると、オーバースペックなCPUを選ぶことが少なくなります。
実際に私が設計したESP32 CPUボードではESP32-C5を採用しています。
しかし、それはWi-Fi 6やBLE 5への対応を重視した結果であり、「ESP32-C5が一番高性能だから」という理由ではありません。
例えば、工場設備の監視装置であればESP32-C3を選ぶ可能性がありますし、画像処理を伴うシステムであればESP32-S3を選びます。
つまり、CPU選定で最も重要なのは、
「CPUから選ぶ」のではなく、「製品仕様から逆算して選ぶ」
という考え方です。
これは私自身が組み込み機器の開発を行う中で、常に意識している設計方針でもあります。
実際にCPUを置き換える際には、GPIOや起動ピンなどの互換性も確認する必要があり、
こちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
ESP32シリーズは年々ラインアップが充実し、用途に応じて最適なCPUを選べるようになりました。
一方で、選択肢が増えたことで「どれを選べば良いか分からない」と感じる方も多いと思います。
今回紹介した4シリーズを簡単にまとめると、
- ESP32-C3:低価格でIoT向けの定番モデル
- ESP32-C5:Wi-Fi 6対応で新規開発にもおすすめ
- ESP32-S3:AI・画像処理・USB機器向け
- ESP32-C6:Matter・Thread・Zigbee対応
となります。
私自身も新しい案件ではESP32シリーズを比較しながら選定していますが、最終的に重視するのは「最新かどうか」ではありません。
**「この製品に本当に必要な機能は何か」**という視点で選ぶことが、結果としてコストや開発期間の最適化につながります。
これからESP32を使った開発を始める方や、新しいシリーズへの移行を検討している方は、ぜひ今回紹介した内容を参考に、自分の用途に合ったESP32シリーズを選んでみてください。
技術は、経験から価値になる。
DLROW Design | 現場エンジニア