開発手法とその意味合い
製品開発に投じる開発費は少しでも安くしたい。
当然、初期費用を抑制する事で、後々の製品販売で得られるベネフィットに与える影響は大きく、
安くて思い通りの製品を誰しも開発したいのは至極当然の在り方だと思う。
弊社は開発請負を主たる事業にしている事も有り、
自分たちの利益を減少させかねないこの様な内容を何故記載するのか?と言われるのだが、
その心は、暴利を得てすべき仕事ではなく、顧客(市場)が決めた適正価格に沿えばそれで良いと考えており、
この様な議題を掲げたとて、利益の減少に至るか否かはあまり相関がないものである。
本題に話を戻そう。
顧客が提示する機能・サイズ・デザインなど、所謂、製品仕様を満足するものを、
製品化するに辺り、アプローチとして考えられそうな方法として、
「カスタム開発」と「既製品を用いた開発」が考えられる。
前者は、0ベースの状態から開発していく事を指す。
後者は、幾何かの製品仕様が満足できている既製品を組み合わせで開発していく事を指す。
但し、半導体や電子パーツを用いるという意味では、これらも既製品と言えなくもないが、
ここで言う、既製品は「製品仕様がその既製品で概ね満足できるもの」として定義しておきたい。
カスタム開発
カスタム開発の場合、発生する作業は概ね以下に相当する。
細かく分類すれば、もう少し存在するものと思われる。
- 電子機器であれば電子回路図設計
- 電子機器を動作させる為のソフトウェア設計
- 外観ケースのデータ設計&図面作図
- 外観ケースにデザインが欲しい場合はデザイン草案
しかし、これだけでは製品は形にならない。
この4つの項目は、製品を形にする為の元データを作った状態である。
かなり乱暴な表現にはなるが、元データを用意する為の作業にとなり、
この作業に掛った費用を「開発費」とした場合、
形ある物を用意する上では外す事ができない要素になる。
既製品を用いた開発
既製品を用いた開発は、カスタム開発の作業項目を省略する事ができるものである。
例えば、サイズとデザインを満足する外観ケースが存在すれば、
「外観ケースのデータ設計&図面作図」、「 外観ケースにデザインが欲しい場合はデザイン草案」は、省略できるものになる。
即ち、この2項目に掛る費用は割愛する事ができるわけだ。
もう少し乱暴に行こう。
どこかのメーカーが、電源を繋げば期待する動きをする様なボードを用意してくれていれば、
「電子機器であれば電子回路図設計」、「電子機器を動作させる為のソフトウェア設計」も不要という事になる。
電源として電池 or アダプタを用意すれば、それで言う事無しなのである。
どちらの手法が良いの?
どちらが良いのかは一概には言えない。
それは、どちらにも一長一短があるので、ここでは終止乱暴に語ることとして、詳細を語るのは別の機会としたい。
カスタム開発は、細部にも拘った製品仕様に合致する製品を求めていく事ができる。
また、世の中には存在しないオリジナルの自社製品に仕上がる点もメリットに加えておこう。
デメリットとしては、費用と時間が掛かることだ。
他には、設計内容は、開発会社や設計者しか分からないことが多く、資料やデータは専任者しか扱えない事もデメリットにしておく。
(逆に、秘匿性や企業資産として見れば、メリットとも言える)
既製品を用いた開発は、既に機能満足できる製品パーツを組み合わせる事で製品仕様を満足する。
その為、既製品パーツの購入費と簡単接続作業費で済む。
開発期間という意味では、既製品パーツが手に入るまでの時間と接続作業時間が開発期間だ。
デメリットとしては、既製品パーツの価格・サイズは決まっており、調整が手中にはない。
また、誰でも同じパーツを用意すれば同じ製品が開発出来てしまうのもデメリットに挙げる。
(ただ、コンセプトによってはメリットにもなり得る)
最適な選択は顧客にしかできない
2種の手法を混合したハイブリッドの様な方法も取り得る。
顧客の意向、製品コンセプト、予算など、
結局、関わる要素数分だけ選択肢は存在すると考えている。
随所に「乱暴に・・・」と表現しているのは、
今回の議題の内容において、上げ足を取ればキリがなく、複数の選択ケースが存在することからも、
単純に正解を決めつける事はできない。
「カスタム開発 対 既製品を用いた開発」を顧客企業内で、
戦わせている場面をよく見る。
冒頭から記述している通り、唯一無二の正解は無く、
折り合いをつけれずに、製品開発ができないままという事も少なくない。
また、「カスタム開発 対 既製品を用いた開発」の答えを持っているのが、
開発する側の設計者だと思っている人も少なくない。
単純明快な問いであれば、設計者が解を有している場合もあるが、
弊社の様な開発企業から出せる回答は、顧客の条件をヒアリングした後、
最適解と考えられる内容になる。
その内容が顧客企業のコスト感、製品コンセプト、ブランド思想に合うのかは、
やはり、顧客にしか決定判断できない。
この辺りの掛け合いが響く関係になれると、素晴らしい製品に仕上がっていくというのが、
弊社の持論となる。